嫌なことがあっても、すぐに「でも、いい経験になった」「おかげで気づけた」。
落ち込んでいる人を見ると、つい前向きな言葉をかけたくなる。
「私、あんまり落ち込まないタイプなんです」が、口ぐせになっている。
それ、強みだと思ってきたよね。
——でも、その明るさ。悲しみを“感じる前に”消していない?
ひとつでも心当たりがあったら、少しだけ読み進めてみてください。責めたいんじゃないの。あなたがずっと、自分に優しくし損ねてきたかもしれない、という話です。
ポジティブそのものは、まったく悪くありません。むしろ大切な力です。
見てほしいのは、「前向きかどうか」じゃなくて、「感情を感じる前に前向きにしていないか」——その順番のほうです。
同じ「前向き」でも、この2つは別ものです。前者は、悲しみを無かったことにしているだけ。感情は、感じてもらえないと、消えずにその場に残り続けます。
「私は落ち込まない」が強くなるほど、落ち込んでいる自分に気づけなくなることがあります。落ち込まないんじゃなくて、落ち込む前にフタをするのが、速くなっているだけかもしれない。その速さは、あなたが昔どこかで、「悲しんでいる場合じゃなかった」から身につけたものじゃない?
落ち込むこと、弱音を吐くこと、立ち止まることを——「負け」「停滞」「役に立たない」と感じてしまう人がいます。
そういう人は、たいてい昔、悲しんでいる余裕がなかった。泣いても誰も来なかったり、落ち込むと「そんなことで」と流されたり、明るくしていないと場がもたなかったり。
だから覚えたんです。「感じるより、切り替えたほうが早い」「前向きでいれば、傷つかずに済む」って。それは弱さじゃなくて、あの頃のあなたを守ってくれた、すごく賢い方法だった。
——ただ、大人になった今も、それが自動で作動し続けている。もう、守らなくていい場面でも。
感じないようにした悲しみや不安は、消えてなくなるわけではありません。行き場を失って、別の出口を探すことがあります。
身体の緊張。抜けない疲れ。浅い眠り。お腹が空いていないのに食べてしまう。買いもの。休めないほどの働きすぎ。理由のわからないイライラ。——「心は平気」と言っているのに、暮らしのどこかが少しずつ乱れていく。それは、感じてもらえなかった気持ちが、「ここにいるよ」と知らせているのかもしれません。
悪くありません。見るべきは“前向きかどうか”ではなく“いつ前向きになるか”。悲しみを感じたあとの前向きさは健全ですが、感じる前に意味を変えると、感情は消えずに別の出口を探すことがあります。
切り替えの早さは強みです。ただ「私は落ち込まない」が強いほど、落ち込んでいる自分に気づけなくなることがあります。落ち込まないのではなく、落ち込む前にフタをするのが速い場合があるのです。
身体の緊張・疲れ・浅い眠り・食べすぎ・働きすぎ・理由のないイライラなど、別のかたちで出ることがあります。身体の不調が続くときは、必ず医療機関にも相談してください。これは心の面から見た一つの見方で、医学的な診断ではありません。
関連:“我慢しすぎ”のサイン/偽りの自分(9つの仮面)診断/コラム一覧
これは、心のしくみを見つめるための読み物です。医学的な診断ではなく、すべての人に当てはまるわけでもありません。体や心のつらさが強いときは、我慢せず専門家や医療機関を頼ってくださいね。