実家を出た。もう母には会っていない。それなのに、何かを決めようとするたびに母の顔が浮かぶ。楽しもうとすると罪悪感が出る。頭の中で、まだ母に叱られている——。物理的に離れたのに自由になれないなら、あなたを縛っているのは外側の母親ではなく、心の中に住みついた「インナーマザー」かもしれません。
インナーマザーとは、頭の中に取り込まれた「母親の声・イメージ・価値観」のこと。子どもの頃、繰り返し言われた言葉や、向けられた表情・評価が、いつしか自分の内側に住みつき、実際の母親がいなくても、あなたを評価し・急かし・許可を出す存在になります。
それは、こんな声として現れます。
これらの声が、あなた自身の声のふりをして、日常のあらゆる場面で口を出してくるのです。
子どもにとって、親は世界そのものです。生き延びるために、子どもは親のルールを「正しいもの」として丸ごと取り込みます。それは当時、必要な適応でした。
ところが大人になっても、そのルールは自動更新されないまま、心の中で働き続けます。だから実際の母親と離れても、取り込んだ母親(インナーマザー)が、内側から支配を続けるのです。あなたの意志が弱いのではありません。仕組みがそうなっているだけです。
自由になる第一歩は、頭の中の声を「これは母の声? それとも私の本音?」と切り分けることです。
迷ったら、体に聞きます。その考えに従うと体がこわばるなら母の声、ゆるむなら本音。この見分けを繰り返すことが、インナーマザーをゆるめる練習になります。
何かをしようとするたびに、頭の中で「そんなのダメ」「どうせ無理」というネガティブな言葉が自動で再生される——。カウンセリングの中で「これって私の考えのクセだったんだ」と気づく人も多いです。行動のいちいちに割り込んでくる否定の声、それがインナーマザーのわかりやすいサインです。
母がまだ元気だと、会うたび・話すたびに、インナーマザーが新しいネガティブ発言を覚えて強化されることがあります。せっかくゆるめても、実際の母と接するとまた燃料が足されて、悪循環に戻ってしまう。だから距離をとることは、冷たさではなく“内側の声への燃料補給”を減らすケアでもあるんです。(距離を置くと罪悪感が出る理由)
「なぜかこの音が苦手」「この物を見ると体がこわばる」——理由が自分でも分からない恐怖の奥に、子どもの頃、身を守るために忘れていた記憶が隠れていることがあります。ある日、何かのきっかけでふっと思い出すことも。思い出せたのは、あなたが今、それに向き合えるだけの力を取り戻したサインでもあります。
回復が進むと、「母にも、夫にも、自分に向き合ってほしい」と思うことがあります。でも、相手の課題に踏み込むのは、実は“侵入”になりやすいところ。相手が変わるかどうかは相手のもの。まずは自分の内側を整えることが、遠回りに見えていちばんの近道です。
取り込んだ声は、母とはかぎりません。父の声(インナーファザー)が強い人もいれば、母と癒着して父を遠ざける“三角関係”の役を担ってきた人もいます。あなたに当てはまる形で見ていって大丈夫です。(内的父性の診断)
アダルトチルドレンの回復には、段階があると言われます。まず、生きづらさの原因が「自分のせい」ではなく育った環境にあったと気づいた人をサバイバー(survive=生き延びた人)と呼びます。ここから、傷を癒して成長した先にあるのがスライバー(thrive=より良く生きる人)です。斎藤学氏の著書では、スライバーにこんな特徴があるとされています。
今つらくても大丈夫。これは「才能」ではなく、向き合った人が少しずつ育てていける状態です。実際の母を前にしても以前ほど萎縮しなくなったり、「それは母の声、私は私で決める」と言い返せたら、それはもうスライバーへ進んでいるサインです。
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※ 母親を責めるためではなく、あなたが自分の人生を生きるための気づきを目的としています。医療的な診断ではありません。
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